撮影:榊水麗

 経営危機が報じられる日産自動車は本当に自主再建が不可能な状況なのか──。自動車経済評論家の池田直渡氏とモータージャーナリストの岡崎五朗氏がJBpress autograph編集長の鈴木文彦とともに、一般的な報道とは異なる視点で自動車業界のニュースを語る動画番組「JAPAN INNOVATION CHANNEL(イノチャン) みんなが言わない自動車NEWS」。初回は、コロナ禍が自動車業界に与えた影響、米国市場におけるインセンティブ競争の構造的問題、日産の再建計画を取り上げ、メディアが伝えない実情に迫った。

※本稿は、2025年5月30日に配信した「みんなが言わない自動車NEWS」の内容を採録したものです。

日本自動車メーカー8社の2025年3月期決算を総ざらい

鈴木文彦 今回は初回ということで、「日本自動車産業のこれから」という大きなテーマでお願いします。特に、メディアがネガティブな表現で日本の自動車業界を語りがちな傾向に、本当にそれは適切なのかをお二人とお話ししていきたいと思います。

岡崎五朗氏(以下敬称略) 日本のメディア報道を見ていると、現実から乖離(かいり)した論調が目立ちます。現実を踏まえて将来を考えるべきなのに、その現実が軽視され、理想論ばかりが先行してしまう傾向があります。池田さんとも常々話しているのですが、「みんなが言わない自動車NEWS」では、そうした一般的な報道とは異なる視点を届けていきたいと考えています。

モータージャーナリストの岡崎 五朗氏

鈴木 5月中旬頃から日本の自動車メーカー各社の決算が発表されました。池田さんは早速、ご自身のnoteに各社の解説をされていましたよね。

JBpress autograph編集長/Japan Innovation Review編集者 鈴木 文彦

池田直渡氏(以下敬称略) はい。もう速報性が大切ですから必死で書きましたよ。

自動車経済評論家の池田 直渡氏

鈴木 ここでも、各社の動向を売上高順に見ていきたいのですが、まずはトヨタ。利益率も良く、手堅く好調と見ていいでしょうか?

池田 増収減益ではありますが、決算は基本的に前年との比較で評価するものです。前年が突出して好調であった場合、翌年は必然的に数値が下がります。これを単純に「減益、減益」とマイナス評価するのはおかしくて、記録的な数字を出した翌年にそれを再び上回ることは現実的ではありません。業績は為替と同様に上下動を繰り返しながら推移するものであり、今回の結果は大きな意味でのマイナスではないと考えています。

鈴木 次はホンダですが、こちらも基本的には好調かと思います。

池田 ホンダとスズキの決算で難しい点は、両社が4輪事業だけでなく2輪事業も展開していることです。決算は企業全体の健全性を示すため、全事業の業績が合算されます。ホンダは今期、2輪事業が空前の好調を示しており、この分野で大きな収益を上げています。全体としては良好な方向にありますが、4輪事業については2023年度に利益率が向上したのですが、再び下落したという状況です。

鈴木 続いて、工場閉鎖などのリストラが大きく報道されている日産です。