乗り心地を左右する黒子のダンパー

 ダンパーには様々な種類があり、コストに応じて性能が違う。ダンパーの違いによるクルマの性能差は極めて大きいのが現実だ。

 筆者は1980年代からこれまで、自動車メーカーの量産車開発に携わっており、その中にはダンパー開発も含まれる。

 また、1980年代〜2000年代には「アフターマーケット」と呼ばれるチューニングカー分野でサスペンションの販売が大きく伸びた歴史がある。その間、筆者は取材者として、日米欧で、数多くのダンパーの比較試乗した経験がある。

 近年では、アフターマーケットでスプリングやダンパーを交換するユーザーはかなり減っており、一般的にクルマのダンパーの存在感が薄れている印象だ。

 こうした中、ダンパー分野で国内大手のカヤバ(ブランド:KYB)が「作動油」に注目した新商品を2026年から市場導入する。

カヤバが比較試乗の前に技術的なプレゼンテーションを行う様子(写真:筆者撮影)

 カヤバは1919年創業で2024年度の売上は4383億円、連結ベースの従業員数1万2951人の自動車部品大手だ。

オリジナル配合の作動油を生み出したカヤバ

 作動油とは、ダンパー内部にあるオイルのこと。ダンパーは棒状の金属であるロッドがピストンバルブ機構を介して作動油の中で上下運動をする仕組みで、作動油はダンパーにとって重要な構成要素である。

カヤバ製の各種ダンパー=ショックアブソーバー(写真:筆者撮影)

 一般的にダンパーメーカーは石油メーカーから作動油を購入しているが、カヤバでは2008年から、社内で作動油に関する研究開発を始めた。その知見をもとに、2018年までは石油メーカーにレシピを委託する形をとっていた。

 そうして2018年には、カヤバの独自レシピによる作動油「Prosmooth(プロスムース)」を発表。ほどなく大手自動車メーカーが量産車への採用を始めた。

 さらにカヤバは、環境性能と乗り味向上の両面で優れた性能を持つ独自レシピの作動油の研究を進めていった。その結果、今回試乗した「サステナルブ」が誕生したというわけだ。「サステナルブ」とは、サスティナブル(持続可能)とルブリカント(潤滑油)を組み合わせた造語である。

サステナルブに関する技術展示(写真:筆者撮影)