羽田空港近くの施設を基点に実施された、カヤバの報道陣向け試乗会では、異なる作動油を使った2台の「ヤリスハイブリッド」を乗り比べた(写真:筆者撮影)
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「ダンパー」、または「ショックアブソーバー」という言葉を聞いたことがある人は、どのくらいいるだろうか。クルマ好きでも、最近はあまり話題にしないかもしれないが、ダンパーはクルマの乗り味やハンドリングを大きく左右する重要な部品だ。そんなダンパー開発で新たなる動きがある。2026年発売予定のカヤバ「サステナルブ」に関する実車乗り比べを羽田空港周辺の公道で行い「明らかな差」を感じた。今回は、その模様をお伝えしよう。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 ダンパーの基本から話を進めたい。

 クルマの「乗り心地」という言葉がある。一般的には「乗り心地がいい」とか「乗り心地が悪い」など、大雑把な表現をすることが多い。また「足(サスペンション)が硬い」とか「乗り味がフワフワする」といった表現もある。

 こうした領域で大きな影響を与えているのが、ダンパーという部品だ。本体が円筒形でその一部が上下に伸び縮みして、外部からの衝撃や振動を和らげる。自動車産業界では「ショックアブソーバー」と呼ばれることもある。

 ダンパーの役割を理解するためにクルマの構造を簡単に紹介すると、基本骨格である車体にエンジンやモーターなどの駆動システムを搭載し、その上に様々なデザインを施したボディが載っている。

 それらがサスペンションを介してタイヤと路面が接触することで、クルマは「走る・曲がる・止まる」という運動性能を発揮できる。サスペンションがないと、タイヤからの振動、衝撃、音などが直接クルマ全体に伝わってしまうので乗り心地は極めて悪くなる。

 例えばゴーカートや車いすなどは、クルマのようなサスペンション機構があるモデルは稀であり、路面からの振動、衝撃、音はタイヤと車体本体が吸収する設計になっている。

 それがクルマの場合、スプリング(バネ)とダンパーによって路面からの振動・衝撃・音を緩和する。スプリングとダンパーは上下運動をし、その動きと車体とをつなぐ金属部材やゴム製品などを含めて全体としてサスペンションと呼んでいる。

 つまり、ダンパーはサスペンションの一部なのだが、エンジンルームやトランクなどからは見えない位置にあるため、ディーラーや修理工場でクルマ全体を作業リフトで持ち上げた状態などでクルマを下から見ないとしっかり見ることができない。

 普段は見ることはできないが、それでもダンパーは、クルマの乗り心地だけではなく、ハンドリングやブレーキングなどの「乗り味」にも直結する重要な部品だ。