正反対な性格の二人

 嵩によれば、暢は「アグレッシヴで、きっちりとしていて、努力家」だった。

 対して嵩は、世事に疎く、だらしなく、新聞紙をきちんとたたむことすらできないほど整理整頓が苦手で不器用と、正反対の性質だった。

 嵩は日常生活のすべて暢に頼っており、時には散髪すらも、暢が行なっていたという(以上、やなせたかし『アンパンマンの遺書』)。

 二人の金銭感覚の違いも、興味深い。

 嵩は学生時代から、必ず翌月の生活費分くらいは手元に残しておくなど、慎ましい。

 対して暢は、明日は給料日となると、有り金をすべて使って買い物をするなど、豪快である。

 柳瀬嵩が34歳で独立した時も、「不安がないと言えば嘘になる」という状態の嵩に対し、暢は「なんとかなる。収入がないなら、私が働いて食べさせてあげる」と平然としていたという。姉御肌で頼もしい暢であった。