現在の高知新聞社の社屋 写真/共同通信社
(鷹橋忍:ライター)
今回は、NHK連続テレビ小説『あんぱん』において人気の高い、津田健次郎が演じる東海林明と、妻夫木聡が演じる八木信之介のモデルと噂される人物を取り上げたい。
東海林明のモデルは青山茂?
今田美桜が演じる主人公・のぶと、北村匠海が演じる柳井嵩が配属された高知新報の「月刊くじら」編集室の編集長・東海林明のモデルとみられているのは、青山茂である。
青山茂は、明治41年(1908)1月14日に生まれた。
大正8年(1919)生まれの柳瀬嵩(やなせたかし)よりも11歳、大正7年(1918)生まれの嵩の妻・暢より10歳年上となる。
柳瀬嵩と、嵩の弟・千尋と同じく、城東中学校(現在の高知県立高知追手前高等学校)を卒業し、その後、早稲田大学政経学部に進んだ。
早稲田大学時代は、水泳選手として活躍した。800メートル自由形の当時の記録保持者となっている。
東京開催の国際水泳競技大会では、大正13年(1924)のパリ・オリンピックと昭和3年(1928)のアムステルダム・オリンピックで計5個の金メダルを獲得し、世界記録を67回書き替えた水泳選手で、後に12本のターザン映画でターザン役を演じたジョニー・ワイズミュラー(1904~1984)と泳いでいる。
新聞連載漫画『フクちゃん』などで知られる漫画家の横山隆一、直木賞作家の田岡典夫の二人は、古くからの親友だという(高知新聞社『やなせたかし はじまりの物語 最愛の妻 暢さんとの歩み』)。
早稲田大学在学中に新聞記者になることを決意し、同学を退学。文化学院でジャーナリズム講座を受けた後に、昭和8年(1933)、高知新聞社に入社した(広報『あかるいまち』2025年07月号「歴史万華鏡コラム151回 先輩、青すの存在」横⼭隆⼀記念まんが館 学芸員 ⼤野雅泰)。
昭和21年(1946)、高知新聞社が月刊誌『月刊高知』を出すことになると、編集長を務めた。
編集部は青山茂の他に、柳瀬嵩と、後に嵩の妻となる小松暢、倉悠貴が演じる岩清水信司のモデルともいわれる品原淳次郎の、総勢4名であった。
『月刊高知』は、創刊号の3千部が2日で完売するなど大反響を呼んだ。
その後、『月刊高知』は、昭和25年(1950)9月49号を最後に廃刊。青山茂は、同年5月5日創刊の「こども高知新聞」の初代編集長となった。
交友関係は広く、高知を訪れる文化人の案内役も務めており、小説家の井伏鱒二の『取材旅行』所収の「土佐の土居城」にも登場している。
なお、ドラマの東海林編集長と違い、酒はまったく呑めなかった。
高知新聞社『高知年鑑』によれば、カメラと花作りが趣味だった。
高知新聞社の退職後は、四国銀行顧問となって社史の編集作業を担い、庭でバラを育て、孫と水遊びを楽しんだという(高知新聞社『やなせたかし はじまりの物語 最愛の妻 暢さんとの歩み』)。