八木信之介のモデルは?
戦時中、柳井嵩が所属していた小倉連隊の上等兵だった八木信之介には、モデルと噂される人物が2人いる。
1人は新屋敷上等兵である。
柳瀬嵩は、昭和16年(1941)に、福岡県小倉にあった陸軍第十二師団野戦重砲兵第六聯隊の補充隊(通称・西部第七十三部隊)に入営した。
そこではドラマでも描かれたように、初年兵である柳瀬嵩は、上官や古兵による暴力の嵐に晒された。
やなせたかし『アンパンマンの遺書』によれば、上等兵の三年兵となれば、「戦友」と称して、隣のベッドの初年兵が、靴みがき、銃剣の手入れまで、全部世話をする。
そんななか、柳瀬嵩が戦友とされたのが、新屋敷上等兵だった。
新屋敷上等兵は三年兵で「鬼屋敷」と呼ばれ、恐れられていたが、なかなかの快男子で、特に馬の扱いに秀でていたという。
不器用ながらも柳瀬嵩は、手に針を持って襟布を縫いつけ、新屋敷上等兵の靴下や下着の洗濯をした。
柳瀬嵩は、「上等兵殿が風よけになって、いくらかリンチの嵐は防げた」と述べている。
確かにドラマで、柳井嵩にさりげなく助け船を出していた八木信之介に、重なる部分も感じられる。