余命3カ月を宣告される

 嵩は、少し風邪を引いただけでも、「もうダメだ。悪い病気に罹ったに違いない。俺はもうすぐ死ぬ」と、やたらオーバーに騒ぎ立てる。

 反対に暢は、「私は悪妻かもしれないけど、元気が取り柄」が口癖で、けっして弱音を吐くことはない。多少、体調が悪くても、仕事や家事に追われているうちに、快復するのが常だった(梯久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』)。

 だが、暢の我慢強さが、仇となったのかもしれない。

 体調を崩した暢は、診察を受けると、乳がんと診断される。がんはすでに、全身に転移していた。

 暢の体には痩せたり、頬にシミができたりと異変が起きており、発熱も自覚していたが、嵩に心配をかけたくないため、黙っていたという。もっと早く受診していたら、また違った結果になったのではないだろうか。

 その後、暢は手術ときつい放射線治療を受けたが、気丈にも、痛いとか、辛いとかを、絶対に口にすることはなかったという。

 暢は余命3カ月を宣告されるが、足かけ6年を生き抜くが、ドラマの「のぶ」も、同じ道をたどるのだろうか。