日本人を苦しめる円安インフレと実質ゼロベアノルム
──日本の場合、本来やるべきは大企業がインフレを上回る賃上げを推し進めることだと思いますが、日本では選挙の争点が「政府はばら撒きをするのか、減税をするのか」になってしまいます。
唐鎌:インフレ対策の王道は古今東西、利上げです。だからFRB(連邦準備制度理事会)もECB(欧州中央銀行)もコロナ後のインフレに利上げで対応してきました。ところが、日本銀行はなかなか利上げをしません。不人気な政策ではありますが、だからこそ、政府から独立した中央銀行がやるべきなのです。
ばら撒きや減税は、目先の家計の苦しさを若干緩和するように見えますが、むしろインフレを助長する要因です。一方で、企業は賃上げをするようになったとはいっても、せいぜいベースアップ分はインフレ相当分以下にとどまっています。
つまり「実質ゼロベアノルム」が定着しているので、インフレが進めば実質賃金はマイナスになって、結局、家計の負担は増えてしまいます。
また、日銀が利上げをしなければ、実質金利のマイナス幅が拡大するので、金融緩和をより拡大しているのと同じことで、これもインフレをさらに進めてしまいます。日銀は1月の利上げの後、トランプ関税などに配慮して利上げを見送ってきましたが、この先も、いろんな理由を挙げて踏み切れないのではないかと懸念しています。中央銀行の矜持を示すべきだと思うのですが……。
──政局が混迷していますが、消費税減税や消費税廃止などということになれば、日本国債は格下げのリスクがあります。世界的な長期金利の上昇の中、日本の長期金利も上昇していますから、財政を考えると危うい状況です。
唐鎌:アベノミクスの大規模な金融緩和は大きな問題を残しました。財政規律が緩んで公的債務も膨張している。ご存知のように、私も河野さんもアベノミクスには当初から反対し続けてきました。
本書では、アベノミクスのような「一発逆転の発想」の問題点を指摘しています。公的債務の拡大と長期金利の急上昇リスク、そして長期金利は日銀が抑え込むとしても、為替市場で円売りが暴走するリスクがあり、その点について詳しく解説しています。