長期的トレンドとして円安が続くと考える理由

──唐鎌さんはアベノミクスが始まった2012〜13年を境に、すでに日本は長期的な円安トレンドに転換したと見ていました。財務省の「国際収支に関する懇談会」では貿易赤字の定着と経常収支黒字がキャッシュフローとしては日本に還流しなくなっていることを指摘。さらに、サービス収支における「新時代の赤字」が拡大しつつあることを解説して話題になりました。本書でその議論がさらに進んでいます。

唐鎌:新時代の赤字として、「デジタル赤字」はかなりメディアでも取り上げられて認識が広がったと思います。

 デジタルはもはや原油などのエネルギーと同様に日常生活に不可欠な資源になってしまい、私たちはGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)のプラットフォームを通じて個人情報を取られ放題なのに、言い値で料金を徴収され続けています。

 クルマに乗ってもシステムがマイクロソフトのクラウドを通じてアップデートされますから、何をしてもお金を取られる感じです。AIの活用でさらに赤字は拡大するでしょう。

 さらに、最近、看過しえなくなってきたのが、「保険・年金サービスの赤字」です。

「需給面から見た円安構造は大きく変わらない」と語る唐鎌氏

 投資性の強い外貨建て保険や外貨建て変額年金の販売が増えたことで、保険会社は為替リスクのヘッジのために海外の再保険会社と契約し、ここでもまとまった円売り・ドル買いが膨らんでいます。

 ほかにも研究・開発サービスの赤字も大きなものがあります。残念ながら一方的な貿易・サービス収支の赤字拡大が予想され、需給面から見た円安構造は大きく変わらないと見ています。

──NISA(少額投資非課税制度)でアメリカ株や外国株投資が盛んなことは知られていますが、保険や年金も外貨建てが広がっているのですね。日本の低金利の副作用の広がりを感じます。本でも論じられているキャピタルフライトが懸念されます。ドル基軸通貨体制の揺らぎ、というテーマについてはどう考えていますか。