備蓄米を販売するファミリーマートの店舗を視察する小泉農水相(中央)。テレビは連日、その言動を伝えている(写真:共同通信社)
テレビは、大リーグの大谷翔平選手と同じように、コメ問題に対処する小泉進次郎農水相の動向を追いかけている。小泉氏は父親譲りの歯切れのよい言葉を武器に、発信力を遺憾なく発揮している。この状況を「小泉劇場・第二幕」などと呼ぶ報道番組まで現れたが、劇場型政治は政策的議論よりも人気取りの演出が勝り、政治の劣化を招く恐れがある。SNSの台頭で「民主主義が試されている」と言われる今、テレビをはじめとしたメディアは、ジャーナリズムとしての矜持が問われている。同時に、批判的な思考を怠らない有権者の自助努力も求められている。
(岡部 隆明:ジャーナリスト)
ニュースでの取り上げ方が過熱し始めていないか
コメを買ったことがある。
小泉進次郎農水相は大臣就任時に、こう発言しました。前大臣が「コメを買ったことがない」と失言して辞任したために、こんな滑稽なことを言わなければならなかったのでしょう。政治家一家4代目の小泉氏としては、国民の反感を鎮静化するために庶民感覚をアピールすることが必須でした。
もちろん、意気込みや姿勢を示すだけでは国民の支持は得られません。コメ価格の高騰が収束するかどうか、政治による成果を出さなければなりません。
小泉氏は持ち前の発信力で、政府備蓄米の活用や販路拡大の支援など、矢継ぎ早に施策を打ち出し、国民から一定の支持を得ているようです。
しかし、中長期的に持続可能な生産と消費の仕組みが確立するのか、注視していく必要があります。コメ価格の高騰は、猛暑の影響による収穫量の減少、インバウンド拡大による需要の増大、投機的な動き、人件費や燃料費の上昇など背景は複合的です。しかも、主食でありながら、消費量が年々減少しているという実態もあり、コメ問題は一筋縄ではいかない課題です。
さらに、コメ問題は、今日的な経済問題だけではなく、政治的な課題になっているという視点も見過ごせません。7月に参議院選挙を控える中で、物価高騰に苦しむ国民に寄り添いながら、一方で、自民党の「票田」である農家を守る——自民党としては、どっちにも「いい顔」をしたいという立場です。
こうした事情も絡んで、コメ問題が政争の具になる可能性があります。有権者は、政府・与党だけでなく野党も含めて、どういう思惑で施策や発言が出てきているのか、冷静に見極めなければなりません。
そうした中、小泉氏の言動について、ニュースでの取り上げ方が次第に過熱し始めているように感じます。