人間より国家を大切に扱う平和記念公園

 ちなみに、冒頭に記した広島国際会議場3階の貼り紙だが、プレスリリースでは掲出期間が「2024年12月2日から12月27日まで」となっていた。半年過ぎても貼ったまま。問い合わせに応じた広島市の担当者によると、当初その予定だったが当面貼っておく、とのことだった。

 5月からは、広島平和記念資料館東館で日本被団協が授与されたノーベル平和賞のメダルや賞状のレプリカの展示が始まった。

ノーベル平和賞の展示コーナー。8月末まで設置されている

 一角には、20年以上前に、被爆者団体が集めた、被爆者らの寄せ書きも展示されている。「国家より人間 戦争より平和」。そんなメッセージも書かれてあった。

 国家より人間。本当にその通りだ。なのに、少なくともこの平和記念公園の中で、大事に扱われているのは、残念ながら人間(市民)よりも国家だ。

 展示コーナーからガラス窓を隔てて目の前に、核兵器を手放すつもりがさらさらない国の首脳たちが広島にやってきたことを記憶するためのG7サミットの記念館が鎮座している。なんともシュールな光景だ。

ノーベル平和賞の展示コーナーの目の前にはG7広島サミット記念館が

 平和記念公園一帯には、原爆投下までは広島屈指の繁華街が広がっていた。地元・中国新聞社の「平和記念公園(爆心地)街並み復元図」を見ると、G7広島サミット記念館が立つ場所付近にはかつて、木炭商店の「佐野」さん宅があった。そして、ソメイヨシノが植えられた場所は、「大松」さん宅付近と見られる。

 国家が始めた戦争によって家も命も未来も奪われた彼らは、この状況をどう思うだろうか。