ヒロシマの訴えと乖離、「核兵器は必要」と確かめ合ったG7サミット
2年前のG7広島サミットでは、「広島ビジョン」を、開催国首相である岸田氏が中心になってまとめた。
核軍縮に特化した初の合意文書ではあるが、その内容は、「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」という文言が示すとおり、核抑止を肯定した内容となっている。要するに、敵とみなす相手に対し、核兵器の脅威によって攻撃を思いとどまらせる考え方を肯定していることにほかならない。
つまりそれは、核兵器は絶対悪であり、核兵器の使用のみならず保有も許されない、というヒロシマの訴えとは大きく乖離している。
平和記念公園で植樹をした首脳たちは、徒歩わずか3分の先にある、公園内の原爆供養塔に立ち寄ることはなかった。
ここには、引き取り手のない約7万柱の遺骨が納められているのだが、岸田氏はなぜこの場所を案内しなかったのだろうか。「被爆地出身」の政治家ならば当然ご存知とは思うが、80年経っても帰れない人たちが眠るこの場所は、核兵器がいかに残忍かを静かに訴える場所なのだが。
そんな、ヒロシマの思いとはかけ離れた内容のサミットだったのに、先に引用した通り、「歴史的なサミットを県民や市民の『誇り』」とするために、5000万円をかけて記念館を建設し、年間46万円をかけて為政者たちが植樹したソメイヨシノを警備しているのだ。