このように、コメ流通のサプライチェーンにあって他のプレーヤーを圧倒する農協の市場シェアや存在感は、コメ価格の高騰が利益の拡大につながる収益構造と併せて考えると、需給のひっ迫によるコメ価格の変動を増幅してしまう可能性がありそうです。

 このため、江藤前農水相の方針を撤回して、「随意契約」によりJA全農を経由せずに備蓄米を小売店などに「直販」する小泉新農水相の取り組みは、コメ流通の「市場構造」を踏まえた合理的で効果的なアプローチとすることができそうです。

「ガバナンス」の観点から見た「令和の米騒動」

 集出荷業者や米穀卸の業績は、コメ価格の上昇がプラスに働く可能性が指摘できそうです。というのも、単価が上昇して米の流通金額が膨れ上がるにつれて、売買手数料にあたる口銭は増加していきますし、サプライチェーンに留まる中間在庫に評価益が生じることになるからです。つまり、農協や米穀卸からすれば、「コメ価格が上がってほしい」と願うのは、コメ流通を生業としている以上は自然な思いと言えそうです。

 一般的に、商品の価格が市場の需給を反映して変動するのはごく自然な動きといって良いでしょう。しかし、同業者間で販売価格を相談したり、申し合わせて出荷を絞ったりするようなことがあれば、それは法的、道義的に許容されるものではないでしょう。