トランプ政権への懸念などからドル不安が強まるなか、金(ゴールド)価格が上昇しています。新NISAも2年目に入り投資家のすそ野が広がる中、「金」は投資対象としてどのように見るべきでしょうか。元日本経済新聞社の編集委員・論説委員で、金属などのコモディティー(商品)を30年以上取材してきた志田富雄氏に聞きました。3回に分けてお届けします。(聞き手:細田孝宏=JBpress編集長)
(取材日:2025年4月21日)
金を投資対象と見るべきでない
——投資対象として、金(ゴールド)をどう評価していますか。
志田富雄・経済エコノミスト(以下:敬称略):あまり金を投資対象として考えない方が健全かと思います。では、何のために金を持つのか。資産全体の価値を安定させるということです。
金は過去のデータを見ても、株や債券などと極めて相関性が低いのが特徴です。対照的なのが仮想通貨の「ビットコイン」です。ビットコインは「(積極的にリスクの高いものに投資する)リスクオン」の状態だと非常に上昇しますが、その逆の状況では急激に下がる。金は逆です。
さらに、日経平均株価は2024年の1年間で約19%上昇した一方、金価格は円建てで約40%上昇しました。それだけ金はインフレに強く、通貨価値の下落(円安シフト)から自分の資産を守ることができます。
例えば、家を買うのに必要な資金がだいたい金10kg相当だとすると、それは過去に遡ってもだいたい同じです。インフレが進んでも、金を持っていたらその分、金の価値も上昇するので、同じ量の金で家を買えるということです。つまり、金は資産価値を守ることができるという非常に大きな意味を持ちます。
——ようするに、金に投資してもうけようと考えるのではなく、あくまでも資産の防衛のため、と考えるべきということですか。