「VWショック」がきっかけ

志田:一つのきっかけは「フォルクスワーゲンショック」です。ドイツの自動車会社、フォルクスワーゲンによるディーゼル車の排ガス不正が2015年に発覚し、(編集注:プラチナが触媒に使われるVWのディーゼル車の販売が減少するなどして)、プラチナ価格が低迷して金に逆転されました。当初、金価格がプラチナ価格を上回るのは一時的だろうと言われました。しかし、価格差はどんどん広がっています。

 足元では、トランプ関税により自動車需要が影響を受けることが懸念されていることなどから、プラチナ価格と金価格の差はますます広がっています。

——この先の金相場を占う上でのポイントはなんでしょうか。

志田:世の中の不透明感がなくなり景気拡大局面になれば、金相場も落ち着くでしょう。現段階では逆方向に向かっているので、金価格の上昇が加速しています。

 ただ足元はどう見ても上昇が加速しすぎているので、どこかでいったん、調整局面が訪れるでしょう。米国債などから逃げ込んでいるお金も相当あるので、トランプ関税などが落ち着くと、金価格は下落する可能性があります。

※本稿は個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。

志田 富雄(しだ・とみお)
経済コラムニスト。2024年まで日本経済新聞社で編集委員や論説委員。エネルギー、金属市場などの取材歴が30年以上に及ぶコモディティー(商品)分野のスペシャリスト。コメをはじめとする国内の食品市場や水産資源問題にも詳しい。日経電子版「Think!」投稿エキスパート。日本メタル経済研究所特任アナリスト