金(ゴールド)価格が4月下旬、連日最高値を更新するなど勢いが増しています。国際指標となるニューヨーク先物は1トロイオンス=3500ドルを突破(4月22日)。足元では米中関税戦争の緊張緩和や利益確定売りなどにより調整していますが、トランプ関税などへの懸念でドル不安が強まるなか、安全資産とされる金の需要が高まってきました。なぜ金を買うのか、どこまで金価格は上昇するのか。元日本経済新聞社の編集委員・論説委員で、金属などのコモディティー(商品)を30年以上取材してきた志田富雄氏に聞きました。3回に分けてお届けします。(聞き手:細田孝宏=JBpress編集長)
(取材日:2025年4月21日)
金、30年で10倍以上値上がり
——金(ゴールド)価格が4月に最高値を更新するなど上昇を続けてきました。なぜ今、金相場はこれほど上昇してきたのでしょうか。
志田富雄・経済エコノミスト(以下、敬称略):そもそも私が金の取材を担当し始めたのは1990年代半ばでした。当時は、前任からの引き継ぎで「価格は全然動かないよ」なんて言われたのを覚えています。1トロイオンス(約31g)が300ドル前後の低迷期が2001年ぐらいまで続きました。
その時代は、金から見てドルが非常に強かった。90年代半ば、米国のビル・クリントン政権時代にロバート・ルービン財務長官が「強いドルは国益」と打ち出し、ドル資産を持つことを促しました。その結果、ヨーロッパの中央銀行が保有していた金を相次ぎ売却し、米国債などのドル資産に変えていきました。
——トランプ政権の関税政策などでドルへの信頼が揺らいでいる今とは正反対の動きですね。低迷期を経て、その後は上昇トレンドに入りました。どういう要因があったのですか。