最高値更新が続く金価格はどうなるのか。写真は「田中貴金属直営店 ギンザタナカ本店」のボードに表示された金の店頭価格。撮影は4月22日午後(写真:共同通信社)

 トランプ大統領による関税政策は、朝令暮改で先が読みづらい。それに加えて通貨についての姿勢も定まらないとの声が聞こえてくる。米政権は、米ドルが国際基軸通貨であり続けるメリットを手放したくはないが、米ドルが高すぎることへの不満を口にする。米ドルを支えたいのか、水準を切り下げたいのか、どちらが本当なのか? 投資家は、真意を図りかねている。

 そんな中で注目され続けているのが、堅調地合いを続ける金(ゴールド)である。不安定な米ドルに対して、上昇基調を続けるゴールドという好対照は、2025年前半の市場トピックスの一つと言ってもよいだろう。そこで以下では、この米ドルとゴールドの関係について、歴史的に整理してみたい。

(平山 賢一:麗澤大学経済学部教授/東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

基軸通貨ドルの揺らぎで注目されるゴールド

 2024年を通して、世界中の投資家は、米ドルや米株といった米国資産に偏ったポートフォリオを受け入れてきた。

 だが2025年に入ると、通貨をめぐる米政府の姿勢が見えづらくなり、投資環境の視界が霞み始めている。全世界の株式を対象にした指数の約3分の2は米ドル建てであるため、米国内の投資家を除けば、米ドル集中に気が気でないのは理解できよう。

 米政権は、グローバル経済を支える米ドル基軸体制に、フリーライド(タダ乗り)している国々を批判し始めている。戦略的なシナリオに沿ったブラフ(見せかけ)であればよいが、一つ間違えば、基軸通貨としての米ドルの位置づけが転換し、ニクソン・ショックに匹敵する大変動につながるリスクと背中合わせだ。それだけに、投資家にとっては、米ドル一極集中のリスクを感じざるを得ないというのが正直なところだろう。

 わが国の個人投資家も、2024年以降、NISA口座を通して積み立てている株式ポートフォリオが米国株に偏っているだけに、他人事と笑ってばかりはいられない。

 そのような中で、投資資産としてのゴールドに注目する人々も目立ち始めている。金地金、金貨、ETFなど投資手段は様々あるが、19世紀から20世紀半ばまで通貨の裏付けとして君臨し続けたゴールドを再評価し始めているのである。