確かに、米国の金融システムは、世界中に信用供与を行い、米連邦準備制度(FRB)が、通貨スワップ協定により世界中の主要中央銀行に米ドルを供給できる体制は維持されている。

 とはいえ、米ドルに依存し過ぎる通貨システムへの疑念が中国やロシアだけでなく、その他の地域でも芽生えているのは事実である。少なくとも、英ポンドから米ドルに基軸通貨が移行したように、基軸通貨の地位は永遠でない点だけは再認識しておくべきであろう。

金への過信も避けたい

 つまり、グローバルに株式や国債を中心にしたポートフォリオをもつ投資家は、米ドル建ての有価証券の比率が高くなるため、歴史的経緯を踏まえて、米ドルとの結びつきが薄いゴールドなども一部保有しておくことが無難と言えよう。米ドルそのものが基軸通貨の座を降りる可能性はなお低いとはいえ、トランプ政権第二期では、場当たり的にその位置づけが揺らぐリスクがあるからである。

 さらに、銀でさえも技術の進展により、本位通貨の地位を追われたという教訓は、ゴールドにも当てはまる。ゴールドへの過信も避けたいところである。

 2025年の投資家は、「分散投資」という原則に忠実であるべき正念場を迎えているのかもしれない。

※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。

著者の近著『金利の歴史』(中央経済社)