日本企業でもここ数年「ジョブ型」雇用を取り入れる企業が出てきています。ジョブ型とは、年功序列ではなく主に仕事の内容で給料が決まるとされる仕組み。厳格に運用すれば、とても厳しい能力主義の人事制度です。そうしたなか、出世できず、スキルもそこそこの「ふつうの会社員」はどう生き抜くべきなのでしょうか。人事戦略などを専門とするパーソル総合研究所の上席主任研究員の藤井薫氏に聞きました。3回に分けて賃上げ・初任給大幅アップをテーマにお届けします。(聞き手:細田孝宏=JBpress 編集長、取材日:4月7日)
【JBpressナナメから聞く/パーソル総合研究所・藤井薫氏インタビュー】
(1)初任給50万円でもよろこべない!賃上げの不都合な真実…2年目以降の昇給幅は減少、知られざる配分の実態とは
(2)配属ガチャも転勤もなし…会社は新卒にやさしすぎる?辞めてほしい人/欲しくない人、会社の本音は
(3)ジョブ型人事はつらいよ!「ふつうの会社員」の生存戦略 管理職は罰ゲーム、B評価なら実質減給
「管理職は罰ゲーム」?ショブにより給料に差
——ここ数年「ジョブ型」という言葉を耳にしますが、そもそも「ジョブ型」の雇用とは何か、改めて教えてください。
藤井薫・パーソル総合研究所上席主任研究員(以下、敬称略):多くの方は、「ジョブ型」とは「仕事によって給与が決まる仕組み」とのイメージを持っていると思いますが、大雑把にはそのような理解でよいでしょう。
実際にジョブ型を採用しているという企業の運用実態を見ると、管理職は比較的、一般的なジョブ型のイメージに近いと思います。人事部長、財務部長など、それぞれの仕事(職種、ポジション)に応じて、それに見合った給料が設定されていることが多いです。
一方、一般社員層は、人事や経理、営業といった職種によって給料が違うという会社は非常に少ないと思います。特別の給与水準が設定されるような仕事、例えばデータサイエンティストなどは極めて例外的です。
一般社員層で考えると仕事の種類よりも、むしろどんな業種の企業なのか、どれくらいの企業規模なのか、といったことが給料水準に大きな影響を及ぼしています。
——管理職については、本来の「ジョブ型」の給与体系に近くなっているということですね。
藤井:これまでの能力主義的な給与体系は係長レベルの等級になれば、係長をする能力がある人たちということでその分の給料が支払われるという考え方でした。ただ「ジョブ型」になると仕事基準になるので、実際に係長のポジションについた人だけにその給料が支払われるということになります。
もっと単純に言うと、これまでの能力主義の考え方において係長ができる人が10人いたとすると、10人に対して係長クラスの給料が払われていました。ただ係長ポストが3つしかない中で、「ジョブ型」の考え方では実際に係長についた3人にしか係長の給料が払われません。
そのため、日本企業のこれまでの仕組みだと管理職は責任が多くて大変になっているのに給料は似たり寄ったりで「管理職は罰ゲーム」だという話もありました。こうした背景から、実際の責任に応じて給料を決めたいというニーズが企業にはあります。
ポジションについている人の給与は責任に応じた額にしようという方向になってきています。
——だから近年「ジョブ型」ブームになっていると。
藤井:さらに海外のグループ会社では「職務記述書(ジョブティスクリプション)」が当たり前にあって、それに基づいて給料を管理しているのに、日本の本社だけはそうではない、管理職のグローバルでの人材活用がやりづらいので揃えたと言う声も聞かれます。
——管理職になれない、高度専門人材でもない、でも年次的には課長級クラスの人たちと言うのはこの先どうなるのでしょうか。