ジョブ型では「適所適材」、ポストありきで候補者リスト
藤井:基本的には一般社員層の処遇に近くなっていくと思います。
ただ管理職になった人でも、10年も20年もずっと課長ポストに就いているのかというとおそらく現実的ではない。「ジョブ型」の考え方は「適所適材」です。たとえ本人の業績に問題がなくても、そのポジションにより相応しい人が現れれば、入れ替えるのが当然という発想です。管理職になった人もどこかの段階で外れていきます。

——いったん、言葉の整理をさせてください。「適所適材」や「適材適所」という言い方をしますが、この2つは違うのでしょうか。
藤井:言葉遊びと思われるかもしれませんが、配置の考え方としては全く違います。「適所適材」は、ポジションありきで、たとえば人事部長というポジションに相応しい人のリストを作るという発想ですが、「適材適所」はポジションではなく人ありきです。まず、異動候補者を決めて、その人にハマりそうな仕事のリストを作るという発想です。順序が逆です。
今までの日本企業は「適材適所」の考え方が中心でした。たとえば、入社3年目は異動対象者で、次に各人にどんな仕事をさせようかということで、異動先の候補を考えて定期異動をさせる。一方、適所適材はなるべくリアルタイムでポジションの必要に応じて必要な時期に配置するという発想になります。
——日本企業も「適所適材」の発想になってきているということですか。
藤井:実際にそうなってきています。例えば、日本経済新聞の人事欄は毎月どころか毎日のように掲載されています。
背景には人事異動の権限が人事部から事業部門に移ってきていることもあります。実際「ジョブ型」を考えたときに、仕事の具体的な中身や相応しい人材のことは人事部より事業部門の方がよく分かっています。ある程度人事の権限を事業部門に任せようとする動きが強くなってきているのも「ジョブ型」の影響の1つです。
——藤井さんの著書『ジョブ型人事の道しるべ—キャリア迷子にならないために知っておくべきこと』では、普通の社員にとって「ジョブ型」は結構つらい仕組みなのではないかという話もありました。