2025年の春闘において、連合は4月下旬に第4回目の集計を公表し、賃上げ率が5.37%(前年5.20%)と高い水準が続いていることが明らかになりました(初回集計では5.46%)。労働組合の要求以上の回答を出す企業や初任給「50万円」を打ち出す企業も出てきています。賃金や初任給の大幅アップの背景には何が。人事戦略などを専門とするパーソル総合研究所の上席主任研究員の藤井薫氏に聞きました。3回に分けて賃上げ・初任給大幅アップをテーマにお届けします。(聞き手:細田 孝宏=JBpress 編集長、取材日:4月7日)
【JBpressナナメから聞く/パーソル総合研究所・藤井薫氏インタビュー】
(1)初任給50万円でもよろこべない!賃上げの不都合な真実…2年目以降の昇給幅は減少、知られざる配分の実態とは
(2)配属ガチャも転勤もなし…会社は新卒にやさしすぎる?辞めてほしい人/欲しくない人、会社の本音は
(3)ジョブ型人事はつらいよ!「ふつうの会社員」の生存戦略 管理職は罰ゲーム、B評価なら実質減給
組合要求以上の回答相次ぐ、若手人材確保に危機感
——今年の春闘では高い賃上げが相次ぎました。この動きをどう評価していますか。
藤井薫・パーソル総合研究所上席主任研究員(以下、敬称略):連合の初回の回答集計は5.46%で前年(5.28%)を上回りました。5%を超える賃上げが続いていること自体は非常に良いことだと思います。
——企業が競うようにして賃上げをしている背景は。
藤井:組合の要求に対してすぐに満額回答したり、要求以上の回答をしたりする企業も出てきています。本来、組合としては満額を勝ち取るのがベストなはずで、要求以上の回答があるのであればなぜそこまで要求しなかったのかという見方もありますが…。
こうした動きの背景には、企業側に賃上げニーズ、つまり人材を確保したいという強い意志があります。組合が考えている以上に、企業側は若手をはじめとする人材の確保に危機感を持っているということだと思います。
——人材不足への危機感が相当強いということですね。
藤井:そうですね。一方で人材といった時に、誰でもいいのかというと、そこは微妙です。それでも初任給を上げる動きから言えることは、人材の中でも特に若手が欲しいというニーズが共通してあるということでしょう。