成長実感と昇給実感が乖離する
藤井:企業が初任給を上げるとして、さすがに1年目と2年目の給料が逆転することはあり得ないですが、上げ幅で言えば、2年目や3年目の人の給料も初任給と同じように上がるのかというと、大抵はそうではないでしょう。
単純に説明すると、初任給を3万円上げるのであれば2年目は2万5000円アップ、3年目は2万円アップ、というような形で上げ幅を低減させつつ、逆転もしないように調整していくことになります。そう考えると、一番下の等級の賃上げカーブ(入社後の年数と賃上げの上昇率の関係)は傾きがどんどん小さくなっていく可能性が高い。つまり、「去年より成長したはずなのに給料はあまり上がらない」という事象が必ず起こります。
大卒新入社員は入社3年のうちにおよそ35%が辞めるとも言われています。そうしたなかで初任給の大幅アップが広がると、若手の間で成長実感と昇給実感が合わないというケースが増えてくる可能性があります。
そもそも、賃金全体を底上げする体力がないのに、無理をして初任給をあげた企業は、人材のつなぎ止めの観点で今後、非常に苦しい状況に直面する可能性があります。
【JBpressナナメから聞く/パーソル総合研究所・藤井薫氏インタビュー】
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