トランプ関税への懸念などからドル不安が強まり、金(ゴールド)価格が上昇しています。オリンピックの最高位が金メダルのように、「金」は大昔から「富の象徴」として選ばれています。そもそもなぜ人は「金」を持つようになったのか。どこの国で金を多く保有しているのか。元日本経済新聞社の編集委員・論説委員で、金属などのコモディティー(商品)を30年以上取材してきた志田富雄氏に聞きました。3回に分けてお届けします。(聞き手:細田孝宏=JBpress編集長)
(取材日:2025年4月21日)
金は錆びない「永遠の命」
——この30年間、金(ゴールド)価格は上昇基調にあります。金は太古から「富の象徴」のようにされてきましたが、どうしてですか。
志田富雄・経済エコノミスト(以下:敬称略):有名なところでいうと、紀元前3000年ごろからの古代エジプトのファラオ(王)が金を身につけたり、紀元前に存在したリディア王国が初めての金貨(正確には金銀合金の貨幣)を作ったりと、古くから「富の象徴」とされてきました。金はどこの国に行ってもお金と替えられる価値のある資産という世界共通の認識があります。

——オリンピックでも、金が最高位ですね。
志田:金は決して錆(さ)びないということから、「永遠の生命」という意味合いもあり、宗教的な結びつきがあったとされています。
——日本における金の歴史は。
志田:かつてヨーロッパ人が日本を「黄金の国ジパング」と呼んでいたように日本においても歴史は古いです。
ただ、日本人が資産として金を持ち始めたのは、1973年の「金の輸入自由化」からです。自由化からバブルに至るまで、日本は世界最大の金需要国でした。
ところがバブル崩壊、金融危機に陥り日本が衰退局面にはいると、金の流出国に変わってしまいました。金の動きはその国の経済の勢いの物差しになります。
——では今は、どのような国が金を持っているのですか。