米国への不信感、中央銀行が保有金を積み増し
志田:「米国と距離を置きたい」ということでしょう。中国は典型的ですが、新興国なども収入が大きくなり、外貨準備も増えていく中で、米国と距離をおき「金」を用意するというのがトレンドになっています。
——新興国の資源需要や中央銀行による需給構造の変化が金価格の上昇トレンドに影響したということですね。
志田:さらに2000年代に入り、金のETF(上場投資信託)も登場してきました。これにより、世界的に機関投資家も金市場に多く入ってきました。現物の金を持つのはなかなか難しいですが、金融商品であれば簡単に手にすることができます。
——足元の金相場も大きく上昇しています。
志田:米国に対する不信感、ドル不安というのが強くなっています。
4月に入り、トランプ政権による関税政策により株式市場が急落し、金相場も一瞬下げました。ところがその後、米国債相場が崩れた局面から金が急反転。株・ドル・国債の「トリプル安」の状態になり、そこから逃げた資金が金に逃げ込んできたのでしょう。

上がりすぎ感もありますが、それだけ米国への不信感、ドル不安が強まっているということです。
金融不安が起こるたびに資金が金に向かいます。コロナショックやウクライナ危機、そして今のトランプショックのような危機が頻発する世界で、金にマネーが向きやすい環境になっていると感じています。
※本稿は個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。
志田 富雄(しだ・とみお)
経済コラムニスト。2024年まで日本経済新聞社で編集委員や論説委員。エネルギー、金属市場などの取材歴が30年以上に及ぶコモディティー(商品)分野のスペシャリスト。コメをはじめとする国内の食品市場や水産資源問題にも詳しい。日経電子版「Think!」投稿エキスパート。日本メタル経済研究所特任アナリスト