マーケット視点で読み解くとどうなるか

 農水省の発表によれば、今から17年前の2008年度の主食用米の需要は年間約855万トン、供給は約866万トン、民間在庫(各年6月末)は約160万トンでした。そして、需要・供給ともに一貫して右肩下がりを続けて、2024年度には需要が約705万トン、供給は679万トンまで減少しています。

 この間の「米類」のCPIの推移(9月から翌年8月までの平均値)を見ると、コメ価格の前年比と米の需給ギャップ(需要-(供給+民間在庫))はおおむね連動して変動しており(図表2-1)、2つの数字の関連の強さを示す相関係数は約0.73となっており(図表2-2)、統計的に見て強い相関関係にあることが確認できます。

【図表2-1:米の需給ギャップと「米類」のCPI】

【図表2-2:米の需給ギャップと「米類」のCPIの相関関係】

(注)データは2008年度~2024年産、米の需給ギャップは当該年度の供給と民間在庫の合計から需要を差し引いた数字。CPIは新米の出回る9月から翌年8月までの平均値の前年比、2024年度は2025年4月までの数字。
(出所)農水省、総務省のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 株であれ、債券であれ、商品市況であれ、マーケットでは「売り手」と「買い手」が自己の利益を最大化するよう振る舞うことで「適正価格が決まる」とされています。そして、コメの需給と価格の関係から見えてくるのは、他の市場と同様な「マーケットメカニズム」の存在ではないでしょうか。

 つまり、マーケット視点から見た「令和の米騒動」は、主食用米の需給の引き締まりが起点となった「自然な値動き」とすることができそうです。

コメ流通の「市場構造」と「ガバナンス」

 コメ価格の急騰の背景に「需給の引き締まり」があるとしても1年でほぼ倍にまで上昇するのは、需給バランスだけでは説明がつかない部分があるように思われます。そこで、コメの需給以外に価格に影響を与えそうな要因として、コメの流通の「市場構造」と「ガバナンス」について確認してみたいと思います。