低収益の四輪、二輪への甘えをどう断ち切る?
まずは四輪事業の低収益性だ。25年3月期決算で、ホンダの四輪事業の売上高は14兆4678億円、営業利益は2438億円で、売上高営業利益率はわずか1.7%。これに対し、二輪事業の売上高は3兆6266億円、営業利益は6634億円で、同利益率は18.3%。従前から社内外で指摘されているように、今のホンダは二輪事業に食わせてもらっている状況なのだ。
ちなみにホンダが経営統合交渉をしていた日産自動車の25年3月期決算の同利益率は0.6%。それと比較してもホンダの四輪事業の収益性は五十歩百歩の状態と見られてもおかしくない。こうした状況下で、ホンダはEV事業に注力する余裕がなくなっているとも見ることができる。
ホンダの四輪事業の収益性は09年のリーマンショック以降に下落して以来、回復していない。加えて伊東孝紳社長時代(在任期間09年から15年)に400万台体制から600万台体制に急拡大を狙った結果、品質管理能力などが追いつかず、大規模リコール問題が起こり、それも収益面に影響した。四半期ベースで見ると、ホンダの四輪事業は営業赤字に陥ることもあった。
伊東氏の後任となった八郷隆弘社長時代に、英国、トルコ、埼玉・狭山工場の閉鎖を進めたり、研究開発体制を見直したりして大規模な構造改革を進めた結果、収益性はやや回復したが、10%近い営業利益率を出すトヨタと比べれば、ホンダの四輪事業の収益性は大きく見劣りする。
今のホンダの四輪事業の利益水準ならば、投資家目線に立てば、もうかる二輪にもっと経営リソースを集中させ、四輪事業は縮小させるべきとの声が出てもおかしくない。ホンダの二輪事業の販売台数は25年3月期に過去最高を更新して2057万台を売り、世界販売シェアは40%と1位だ。今後も二輪事業は成長が見込まれ、世界シェア50%を狙っている。
今のホンダの状況は、複数の事業体を抱える企業において収益的に事業同士の相乗効果が見えづらい「コングロマリットディスカウント」の状況にあるといっても過言ではない。ホンダが次の構造改革として打つ手としては、持ち株会社に移行して、四輪事業と二輪事業を明確に分離し、二輪事業の収益にすがる四輪の甘えの構造を断ち切ることも考えていいのではないか。