「健全な民主主義の維持」にも目配りを

 既存の政治システムや選挙制度、さらにはマスメディアによる情報の取り扱い方自体が、新規参入を構造的に困難にしているとの分析は、以前から繰り返し指摘されてきたところである。供託金や自民党の圧倒的な強さなどを指摘できる。

 ここに、良くも悪くも文書図画のなかでもっとも自由であったインターネット、すなわちデジタル空間における新たな規制強化が、活動の制約としてのしかかってくる点はあまり意識されていないのではないか。

 実際、近年の政治的挑戦の多くはインターネットやSNS、動画の活用と密接に関連している。ネットの規制強化はそれらの芽を摘んでしまうか、芽生えにくくしてしまうかもしれない。

 言うまでもなく、偽情報や悪意に満ちた情報操作から民主主義体制を保護する必要性は論をまたない。しかし、そのための規制が、結果として多様な意見、特に少数意見や批判的な言論、政治的挑戦を封じ込める方向に作用するのであれば、それは本末転倒である。

 現代の政治過程において、インターネットやソーシャルメディアは、有権者からの支持を獲得し、政治的動員を行う上で不可欠なツールとしての地位を確立している。

 このツールをいかに公正かつ効果的に活用できるかは、全ての政治勢力にとっての共通課題であるが、特に人的・物的資源に乏しい政治的挑戦者にとっては、その活動の成否を左右する死活問題である。

 政治、選挙分野におけるデジタル規制のあり方は、こうした挑戦者の活動可能性を規定し、ひいては政治全体のダイナミズム、そして民意の的確な反映という民主主義の根幹に関わる問題だということを改めて意識する必要があるのではないか。

 ひとつのヒントは、量的制約や禁止された戸別訪問の禁止等の緩和にあるのではないか。ネットの影響が過度になっているとすれば、それ以外の分野における政治的接点を増やすことで、ネットの影響を緩和、相対化することができるかもしれない。

 また実際には、マンション等のセキュリティ強化もあり、迷惑が懸念されるほど実効的に戸別訪問が行われるかも自明ではない。多様な政治的接触のチャンスが増えれば、ネットの影響は相対化されるかもしれない。

 粗削りのアイディアだが、今後も引き続き論点を掘り下げいくことにしたい。

 いずれにせよ、ネット、SNSと政治というとき、安易な規制強化に傾倒することなく、言論の自由や多元性、多様性の確保と健全な民主主義の維持という二つの要請をいかに両立させられるかが問われている。