首脳会談後の共同記者会見に臨むトランプ米大統領(右)と石破首相=2月、ワシントンのホワイトハウス(写真:共同通信社)

(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

トランプ・ショックの影響の根深さ

 かつて「アメリカ(経済)がくしゃみをすると、日本は風邪を引く」といった。

 それからおよそ30年の歳月が経った。アメリカ経済は高止まりし世界をリードする先端産業が台頭し続けているのに対して、日本のそれはずるずると後退し続けてしまった。「失われた30年」であり、筆者が生きてきた心象風景とも完全に合致する。

 そのなかで日本経済において、当時と変わらない、否、それ以上に際立つのが自動車産業の強さといえる。

 自動車への関心が薄れたようにも思える若い世代は、あまり認識していない印象も強いが、日本産業、いや雇用をはじめ日本社会にとって自動車産業は今でも重要な存在であり続けている。

 そして政治、経済、社会、安全保障の国際慣習を抜本から見直そうとする「トランプ・ショック」によっていち早く、そして大きな影響を受け、交渉の重要主題となっているのもこの自動車である。

 ただ、ニュースで断片的に報じられることはあっても、その構造的な根深さはあまり報じられていない。

 また日々の生活実感からは捉えにくい複雑な波及経路、そして自動車産業という巨大な存在に留まらない広範な影響の可能性については、未だ社会的な認知と理解が十分に深まっているとは言えない状況にあるのではないか。

 そこで本稿では以下において、自動車産業の強さと重要性を改めて概観してみたい。