政治の新興勢力にとって貴重な手段だったが…

 日本において、政治的挑戦者が既存の政治構造に一石を投じ、有権者の広範な支持を獲得することは、決して容易な道ではない。

 日本において、政治の世界に新たな風を吹き込もうとする勢力、特に強固な組織や潤沢な資金を持たない挑戦者が、既成政党の牙城を崩すことは至難の業だ。

 既成政党が長年にわたり構築してきた組織力と資金力に対し、新興勢力は情報発信力と政策の魅力で対抗するほかない場合が多い。この点で、インターネット、とりわけソーシャルメディアの普及は、挑戦者にとって、従来のマスメディアを通じた限定的な露出機会とは異なり、比較的低コストで広範な有権者層に直接的に情報を伝達し、対話を行うための貴重な手段を提供してきた。

 実際、ネット選挙運動が解禁されて以降、多くの候補者や政党がウェブサイトやSNSを積極的に活用し、政策の解説、日々の活動報告、有権者との質疑応答などを展開している。

 これにより、有権者側も候補者の多様な側面からの情報を入手しやすくなり、政治への関心を高める上で一定の貢献があったことは否定できないはずだ。

 だがこのデジタル空間の活用は、同時に負の側面も露呈させた。

 誹謗中傷や悪質なデマの拡散、なりすまし行為、不確かな情報に基づくネガティブキャンペーンなどが横行し、健全な言論空間を著しく歪める事態も頻発している。

 こうした状況を背景として、プラットフォーム事業者による自主的な取り組みの強化や、より実効性のある法的規制を求める声が高まるのは、ある意味で必然的な流れとも言える。

 例えば、TikTokが政治関連アカウントによる収益化や選挙資金調達を禁止するポリシーを導入したことや、YouTubeが「制限付きモード」を提供していることなどは、こうした文脈の中で理解されるべきであろう。

 しかし、これらの「収益化オフ」措置やその他の規制強化が、意図せざる結果として、政治的挑戦者の正当な活動を過度に萎縮させ、結果として既存政党に有利な状況を固定化し、あるいはさらに強化してしまう危険性を孕んでいる点にある。