民主主義に「熱い」韓国

 そもそも、韓国では民主化運動で多くの人の血が流されながら、民主主義体制が確立された。そのために、民主主義は韓国では聖域ともいえる。

 私の職場はあまり政治的なことで盛り上がらない大学だが、講義のなかで民主主義の話になると学生の目の色が変わる。民主主義は大切だと、高校までの教育課程でたたき込まれているのだ。

 尹大統領の弾劾を国会で採決するとき、弾劾に必要な200人の議員が集まらないとき、禹元植(ウ・ウォンシク)議長は、採決に姿を見せない与党・国民の力の議員に対し、国会に登庁するよう求めるにあたり、「誇るべき我が国の民主主義」という言葉を何度も繰り返したのも、そうした価値観に基づいている。

 しかも、李氏が属する共に民主党は、もともとは民主化運動を先導した人たちの政治団体であった。1998年に日本文化を開放した金大中(キム・デジュン)元大統領などは、その代表的な人物である。

 ところが今回の判決文によると、その共に民主党が民主主義に背いているというのだ。韓国の民主主義は、それを中心的に作り上げてきた政党によって根本が揺るがされている。