韓国大統領選の最有力候補、李在明氏(写真:Lee Jae Won/アフロ)

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 韓国大統領選挙の火ぶたが切られた。5月12日午前、アメリカ大使館があるソウルの光化門広場に最有力候補とされる李在明(イ・ジェミョン)氏が姿を見せ、こう訴えかけた。

「これ以上過去にとらわれ、理念や思想、信念に縛られて、分裂し争いあう時間や余裕、そんなものはないんです。これからは進歩だ保守だなどと言ってなんかいられません。ただひとつ、大韓民国の課題、国民の課題だけが我々の前にあるだけなんです。この国を、責任をもって引っ張っていくのは、李在明でもなく、金文洙(キム・ムンス)でもなく、まさしく国民の皆さんなのです」

 この言葉に、広場一帯は大きな歓声に包まれた。韓国のリーダーは、自分も含めた大統領候補ではなく、国民なのだとの宣言に、詰めかけた聴衆が共感したからだ。多くの血が流された末に民主主義を勝ち取ったと自負する韓国人の心を鷲掴みにするような、圧巻の演説である。

 リアルメーターが5月7日から9日の3日間にわたって実施した世論調査では、最大野党・共に民主党の李氏の支持率は52.1%で、これをライバルの与党・国民の力の金文洙(キム・ムンス)氏が31.1%で追っている。

 韓国の大統領選挙について日本では李氏と金氏のみが注目されがちだが、今回の選挙では6人が立候補している。そう考えると、世論調査で過半数に達している支持率は、李氏の圧倒的な強さを物語っている。

 それにしても、李氏は疑惑まみれの人物だ。それなのに、なぜこれだけの支持が得られるのだろうか。

 そのことを考えるうえで、上記の世論調査の時期を確認しておきたい。