変化を求め続けているのにシステムが応えていない
労働党下院議員の暴行事件に伴う補欠選挙でもリフォームUKが議席を奪う勢いだ。世論調査に詳しい英ストラスクライド大学のジョン・カーティス教授(政治学)は英誌スペクテイターのインタビュー(4月26日付)に「選挙の規模は小さいが政治的意味は大きい」と答えている。
「1960年代、労働党と保守党で90%以上の得票があったが、現在では45~47%。今回の地方選は二大政党制から多党制へ移行するリトマス試験になる。リフォームUKはEU離脱支持地域で強く、ほぼすべての選挙区に候補者を立て、初めて全国政党としての組織基盤を築きつつある」という。
英スカイニュース(同日付)も「英国政治の未来を根本から変える可能性を秘めた結果が示されるだろう」と報じ、「政治と主要政党への失望感が全国的に共通のテーマだ。変化を求め続けているのにシステムが応えていないという感覚だ」とのストラテジストの見方を伝えている。
リベラルのエリートはノン・エリートに支持されたトランプ氏の愚かさを嘲笑うが、トランプ大統領を誕生させた自分たちの過ちには口をつぐむ。主要メディアの報道とは裏腹に既存システムを破壊するノン・エリートのマグマは米国に続いて英国をものみ込もうとしている。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。