英国のEU離脱とトランプ現象の共通項

 英国のEU離脱と米国のトランプ現象にはいくつかの共通項がある。二大政党のもと経済的・社会的に取り残された人々の怨恨が死に票として積み上げられた。グローバル経済と自由貿易の旗振り役として脱工業化を加速させ、大量の工場労働者を負け組に転落させた。

 カジノ資本主義が世界金融危機で破綻すると金融機関を救済するため社会的弱者を切り捨てた。コロナ危機とインフレでその傷に塩が擦り込まれた。米国では低所得労働者の所得シェアが縮小し、英国では2022~24年に実質賃金が15~20%も減少した。

 貿易赤字国の米国も英国も製造業の国内回帰を目指している。輸出額と輸入額を合わせた貿易額は世界貿易機関(WTO)によると、米国5兆1920億ドル、米国を除いた世界は42兆8260億ドル、EUは14兆2337億ドル、英国1兆3119億ドル。ちなみに中国5兆9368億ドルだ。

 英国が貿易額で11倍近く大きいEUを相手に離脱交渉を有利に進められると思い込んだのはドン・キホーテ的と言う他ない。結果は英国の惨敗だった。8倍以上の世界相手に貿易戦争を仕掛けた米国も、国別交渉とは言うものの英国と同じように愚かと言えるだろう。