EU離脱を上回る政治ショックが英国を襲う

 原則無償の国民保健サービス(NHS)を国の誇りにしてきた英国の国民負担率は(21年時点)で47.6%(21年時点)、米国の33.9%に比べると社会保障はまだ手厚いが、有権者の不満は米国と同じように大きい。ちなみに日本は48.1%と英国とそれほど変わらない。

 その英国でEU離脱を上回る政治ショックが起きようとしている。

 5月1日、イングランド24地方議会の1641議席、6市長を選ぶ英統一地方選と補欠選挙が行われる。英紙フィナンシャル・タイムズ(4月28日付)は、労働党と保守党の長期にわたる二大政党体制の終焉を告げる新たな多党制時代の始まりを暗示する可能性があると予測する。

 台風の目はEU離脱を主導したナイジェル・ファラージ氏の強硬右派新興政党「リフォームUK」(イギリス改革党)だ。ファラージ氏は政治家というよりキャンペーナーだ。トランプ氏とも気脈を通じる反移民ポピュリスト。

2025年3月28日、統一地方選の選挙集会で演説するリフォームUKのナイジェル・ファラージ党首(写真:ロイター/アフロ)

 同紙の世論調査でリフォームUKは24.9%と、昨年7月の総選挙で地滑り的勝利を収めた労働党(24.2%)、巻き返しを期す保守党(22.5%)を抑えて首位に立つ。

 世論調査会社ユーガブによると、市長選でもリフォームUKの候補者がグレート・リンカンシャーで40%、ハル・アンド・イーストヨークシャーで35%と首位を独走。3月上旬の地方議会選予測では保守党634議席減、労働党84議席減。リフォームUKはゼロから474議席への大躍進だ。