『Breaking4』の主役は女子の最強中距離ランナー

ナイキが新たに起こすムーブメント。今回の主人公は女子の中長距離ランナー、フェイス・キピエゴン(ケニア)だ。1500mで史上初となる五輪3連覇を成し遂げて、同種目で3分49秒04の世界記録を持つ。“史上最強の女子中距離ランナー”と呼べる人物だ。
これまで多くの栄光を手にしてきたキピエゴン。今回、ナイキとともに挑むのが『Breaking4』になる。1マイル(1609.344m)の“4分切り”だ。
1マイル走は日本人には馴染がない種目だが、北米では人気が高く、1950年代前半に男子選手が1マイル“4分の壁”に挑戦したことが注目を浴びた。
グローバル ウィメンズ ランニング VPのシーマ・シモンズ はこう補足する。
「約70年前にロジャー・バニスター(英国)が1マイル4分の壁を初めて破りましたが、女性は4分を切っていません。そしてフェイスがその壁を破る一番近い存在だと思います。彼女はエリートアスリートであるだけでなく、母親でもあり、コミュニティのリーダー。複数の側面を持っており、さまざまな人にインスピレーションを与えています。今回のBreaking4はフェイスが次のチャレンジとしてナイキに話があったことを受け、その夢に応える形で実現しました。このムーンショット(大きな夢)は、ブランドとしてのレガシーを築くだけでなく、次世代に向けた勇気と自由の象徴になると思います」
キピエゴンは1マイルでも2023年に4分07秒64の世界記録を樹立しているが、今回目指すのは4分切り。世界記録を一気に7.65秒も塗り替えなければいけない。トラック1周ごとに平均1.9秒のタイムを短縮させる必要がある。これがどれほど難しいことなのか。
グローバル スポーツ マーケティング VPのタニヤ・ヴィスダックはこう説明する。
「1989年にポーラ・イヴァン(ルーマニア)が4分15秒61の世界記録を作ってから、フェイスが2023年に4分07秒64の世界記録を樹立するまで、約8秒削るのに実に34年もかかりました。常にトップを走り続けてきたフェイスが勇敢さを示すスポーツの進化への大きな取り組みになります。これは女性だけではなく、すべてのアスリートに影響を与えることができるでしょう」
今回のプロジェクトは極めて壮大で、記録のうえでは約30年後に“タイムトラベル”するようなものだ。果たしてどのようにタイムを短縮していくのか。