「手取りを増やす」というコピーが生まれた瞬間

玉木:今だから言いますが、さまざまな案が出ました。手取りを増やす政策にも三本の大きな柱があります。①所得税を中心とした税負担を下げる。②社会保険料負担を下げる。③ガソリン代・電気代といったエネルギーコストを下げる。

 こうしたテーマを包摂して、最初に出たキャッチフレーズ案は「可処分所得最大化計画」でした。ただ、ちょっと漢字が多くて分かりにくいという意見が党内から出ました。

 次に「給与天引き最小化計画」というアイデアが出ましたが、いま一つピンとこない。そこで「手取りを増やす政策」というフレーズに行きつきました。この案を出したのは私です。

 党内からは「当たり前すぎないか」という疑問の声も出ましたが、議論を繰り返す中で、そこに落ち着きました。「広告代理店に頼んでキャッチフレーズを考えてもらったのですか?」と聞かれることもありますが、試行錯誤の中で、自分たちで考えたものです。

 コロナ禍から今日に至るまで、与野党(自民、公明、立憲、共産など)に見られる傾向ですが、住民税非課税世帯への給付を掲げる政策案が多い。もちろん、生活に困窮されている人たち、所得が低いから税金が払えない人たちに対して支援していくことは政治の大切な仕事です。しかし一方で、税金を払っている人たちには支援がありません。

──「働けて所得があるから、あなたたちは大丈夫」という扱いですね。

玉木:そうです。でも、税金を払っている人の中にもさまざまな状況や立場の人がいて、中所得層だって物価高騰で苦しんでいます。私たちは普段あまり光が当たらない、働いて税金を払っている人たちをターゲットに政策を提案しました。それが国民民主党の特徴です。

──「103万円の壁」に続いて「ガソリン暫定税率」を問題視されました。

玉木:「ガソリン暫定税率」も「103万円の壁」も共通しているのは、古い税制だということです。

 103万円の控除額の水準が決まったのは1995年、ちょうど30年前です。ガソリンの暫定税率は1974年にできました。51年前です。我々はこれを「ゾンビ税制」と呼んでいます。社会の変化を阻む古い制度はやめていきたい。その象徴としてこの2つの税制を問題にして選挙を闘いました。

「103万円の壁」に関して言えば、ちょうど失われた30年と言われるデフレ期間の税制度です。せっかく給料が上がっても、むしろすぐに103万円に達して働けなくなってしまう。物価や所得が上がるのは良いことですが、合わせて税の壁も上げないと意味がありません。

「ガソリン暫定税率」は、当時は贅沢品だった車を持っている人に課税したのが始まりです。今やみんな車を持っている。道路整備は終わり、特定財源を外して、道路整備以外のことにも使われている。当初の税をお願いした約束からもはやずれているのです。

 ガソリン暫定税率の影響は物流コストにのしかかります。ガソリンや軽油が高ければ不必要な物価上昇を招くため、やめる必要がある。2024年12月に、自民、公明、国民民主の3党の幹事長間で、この暫定税率を廃止することを決めました。決まっていないのは時期だけです。私たちは今すぐ下げたいと主張しています。

──「ガソリン暫定税率」や「103万円の壁」のような問題のある古い税制は、他の異なる分野でも見られるのですか?