安全保障で影が薄いにどう反論する?
──「政策を現実に打ち出す過程では官僚ネットワークも大切だ」と書かれています。民主党政権時代も安倍政権時代も、「官僚政治からの脱却」が常に1つのテーマでしたが、元官僚の玉木さんは、官僚という存在とどう付き合っていくべきだとお考えですか?
玉木:官僚は日々政策について考えているプロ集団です。一方で、政治家は国民から選ばれていますから、民主主義の正当性を担保して物事を決めていく役割を担っています。
官僚と政治家の立場は違いますが、アメリカや中国、世界とどう向き合っていくのかを考えるために、オールジャパンで英知を結集し、一緒に闘っていくチームだという発想を持つことが必要です。
官僚の力、あるいは官僚との連携による力をどう引き出すことができるのかは政治の腕の見せどころです。
「財務省解体デモ」は物価高騰に対して十分な政策が行われていないという国民の不満の現れですが、役所で頑張って働いている人たちを責めるのはおかしなことです。役所をうまくマネージすることも政治の仕事なのに、本来であれば批判の矢面に立つべき政治家や政党が、財務省を悪者にすることで財務省の後ろに隠れていることは問題です。
私は役人も政治家も両方経験して10年以上経ちますから、両方の考え方がよく分かります。だからこそ、国家国益のためにチームアップしてやっていく態勢をどう組めるのかということが大事だと考えています。
──政権を担うには、経済政策だけでなく安全保障政策も重要ですが、国民民主党は安全保障に関してはあまり印象がありません。
玉木:岸田内閣のときに、防衛三文書を作る直前に、我が党の安全保障政策をまとめて岸田総理に提言しました。その内容が安保三文書の中にかなり入っています。

1つ例を挙げると、間もなく成立するアクティブサイバーディフェンス法(能動的サイバー防御法)があります。その必要性を当時から訴え、石破首相にも「2024年のうちに作ってほしい」と提言してきました。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)などを含む、国の関係機関はサイバーアタックを受けまくっている状況です。日本の大事な情報が抜かれたらまずい。ですから、2024年4月に、憲法21条に反しない形でアクティブサイバーディフェンス法を作るための独自の法案を提案しました。こうした法案を最初に提出したのは国民民主党です。
榛葉賀津也幹事長は防衛副大臣経験者ですし、国民民主党には元自衛官出身の議員もいます。我々は安全保障に関して自信を持っています。だからこそ、我が党の三本柱の1つに「自分の国は自分で守る」を掲げているのです。
国家安全保障というテーマにきちんと責任を果たせる政党でないと、国民は政権与党として任せてはくれません。
玉木 雄一郎 (たまき ゆういちろう)
国民民主党代表
1969年、香川県生まれ。衆議院議員。大学卒業後、大蔵省入省。2009年に衆議院初当選後、民主党副幹事長、民進党幹事長代理、国民民主党共同代表などを歴任。著書に『令和ニッポン改造論』 ほか。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。