「インナー」の議論で決まってきた日本の税制
玉木:たくさんあります。先日、自民党の宮澤洋一税調会長が某ネット番組に出演して「税は私が決めている」「総理も知らない」と堂々とおっしゃっていましたが、実際、その通りなのです。
税は、自民党税調の「インナー」と呼ばれる限られた人たちの議論だけで決められてきました。その結果、一般の人々の感覚からずれが生じることがあります。そして、そういうインナーの人たちにアクセスできる業界団体だけが自分たちの要望を伝え、特定の産業や企業に有利な税制にできる状態も続いてきました。
前回の選挙では、このように税制の細かな点を我が党が問うたことで、お茶の間でも「103万の壁」なんて議論が語られるようになりました。これは大きな変化で、クローズだった税制改正の議論が表に出てきた証拠です。控除の引き上げについて、カズレーザーさんとテレビ番組で議論できる日が来るとは想像していませんでした。
──2024年9月の自民党総裁選では、候補者たちがそれぞれ経済政策を語りました。小林鷹之氏は、伸びていく産業のプレイヤーを集めて、そこに大きく投資しよう(助成金を出そう)、そうすれば日本から成長産業が生まれるといった政策案を語っていました。ラピダスのようなことをイメージされているのだと思います。経済政策としては分かりやすいと思いますが、国民民主党はそのような産業への投資を掲げてはいません。
玉木:失敗すると思うからです。政治家も役人もビジネスをやっているわけではありません。「この辺が伸びているからお金を出そう」と政府が判断しても、常に一歩遅れてしまう。確かに半導体はここ数年の注目のマーケットですが、その中のどんな技術や製品にこれから伸び代があるのかは、役人や政治家には判断できません。
私も先日、ラピダスの視察に行きました。成功してもらいたいとも思います。でも、少なくとも泊原発が動いて、安価で安定的な電力供給がなければ厳しいのではないか。
私は国による大型投資も、財政政策で後押しすることにも反対ではありません。ただ、どの分野に投資をしたらいいかは、基本的に民間が決めればいいことです。
こうした点で、私たちがどういう政策を提案しているかというと、取得額以上の償却を認める「ハイパー償却税制」です。たとえば100億円投資したら、160億円まで減税を認めるということです。
大企業を中心に多額の内部留保があります。投資に回すことで投資額以上の減税が認められるのであれば、投資していただけるはずです。いずれにせよ、どこに投資するかは民間企業が自分で決めるべきです。