都市対抗での優勝に導いたマネジメント
思いどおりにいかないことに対して工夫しながら練習を続けるのは、ストレスがかかるし不安にもなります。うまくできることなら、いくらでも心地よく繰り返せるでしょう。しかし、そこに伸びしろはありません。
自分の弱みを自覚して、ストレスや不安を乗り越えて必死に努力するから成長できるのです。
仕事でも同じ。業務のルーティン化は必要ですが、単にルーティンを心地よく繰り返すのは、PDCA(Plan、Do、Check、Action)のサイクルを回しているつもりでも、同じところをグルグル回るだけ。いわば堂々巡りです。PDCAのサイクルを回しながら、円をどんどん大きくしていかなければなりません。
それには、思いどおりにいかないことから逃げないということが大事です。特に若い人には「苦労は買ってでもしろ。もっとエネルギーを使おうぜ!」と言いたいですね。
飯塚さんは2007年に32歳で現役を引退して、1年間社業に就いた。その後、野球部に戻り、コーチを5年間務め、2014年に監督に就任した。2021年で退任するまでの8年間で、監督として学んだマネジメント手法とは?
NTT東日本の監督に就任してからは、チーム内で「監督」の存在を消すことを意識していました。イメージしていたのは、監督とコーチと選手たちが手をつなぐ「横のつながり」です。
監督の下にコーチがいて、その下に選手たちがいる「縦のつながり」で、監督がアレもコレも指示をしてしまうと、どうなるか?
コーチは監督の指示を選手に伝えるだけ、選手はその指示通りに動くだけになってしまいます。それではやりがいも成長もないですよね? 一人ひとりのエネルギーは小さくなってしまいます。
私が「監督として、こう思う」と言うのではなく、コーチが自分自身の考えを選手に伝えるように促しました。オープン戦ではベンチに入らず、観客席から試合を見ました。
全体練習は実戦形式を中心に約2時間で終わるようにしました。すると、選手たちは自分の課題を考えて、自主練習をするようになったんです。その結果、一人ひとりが役割を果たす「監督不在」のチームができあがり、2017年の都市対抗で優勝を果たしました。