「監督」から「課長」に変わって始めたこと
32歳で現役を引退して社業に就いたときは、まるで新入社員になったようなもの。「ゼロからのスタートだ」と考えていました。
仕事内容は労務管理でした。朝早く出社して終電で帰る毎日の繰り返し。「オレから野球を取ったら、何も残らないんだな」と感じていましたね。
コーチ、監督を経て2022年にシンボルチーム担当課長に就任することが決まったときも「またゼロからのスタートだな」と思っていました。
そんな私に、山村雅之社長(当時)が「飯塚はずっと野球をやってきたんだから、その強みを生かしてほしい」と言ってくださったんです。うれしかったですね。その言葉のおかげで「野球の世界でやれるだけのことをやってきたんだ」という自負を持てました。
私の強みは何か? 主将や監督として、横のつながりを意識して、一人ひとりが役割を果たすように促してきたことです。
それを再認識して、「自分の人脈やノウハウを生かして、シンボルチームの持っているものを世の中に還元しよう」と考えることができました。
NTT東日本では、2022年から野球部の試合の社内向け生配信を始めた。夏の都市対抗と秋の日本選手権で、NTT東日本の試合映像にプロのアナウンサーによる実況と野球部OBによる解説を加えたものだ。
NTT東日本におけるシンボルチームの大きな役割は、スポーツを通した社内の一体感醸成です。
都市対抗や日本選手権では、多くの社員、関係者のみなさんが東京ドームや京セラドーム大阪に駆けつけてくれます。ただ、来たくても遠方までは来られない人もいます。
みんなで生配信を観ながら野球部を応援したり、社歌を歌ったりすることで、従業員の満足度や帰属意識を高める。それは野球部の価値を高めることでもあります。
この生配信は、部下から出た「100%NTTの応援をする番組をつくりたい」というアイデアが実現したものです。「前例がないから」「お金がかかるから」と否定するのではなく、「まずアイデアを出してくれたことがすばらしい」と、前向きに進めました。
部下に「アイデアがあったら、ドンドン提案してくれ」と言っておいて、いざ提案されたら「前例がないから」という理由でボツにする。そんな上司では、部下がやる気を失いますよね?
私には3人の部下がいますが、みんな発想力が豊かです。上司として、彼ら一人ひとりに役割を与えて、持っている力を最大に生かせるかどうか。考え方は、野球で主将や監督としてやってきたことと同じです。
