与党を惨敗に追い込んだ要因とは
敗因にはドイツ国内外の事情が複雑に絡んでいます。2021年の前回総選挙で最大の争点となったのは気候変動対策でした。そのため、再生可能エネルギーの普及や温室効果ガスの排出削減に積極的なSPDが勝利し、緑の党、FDPと連立政権を組みました。
しかし、その後の4年間、世界は激動の渦に巻き込まれます。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻で、欧州各国はウクライナ支援に力を入れました。ドイツではロシアからの天然ガス供給が急減し、エネルギー価格が高騰。産業や国民生活を圧迫します。国民の間では脱炭素に向けた規制や食料品価格の高騰に対する不満が蓄積されていきます。そして、連立の足並みも乱れました。
今回の総選挙で大きな争点となったのは移民問題です。
ドイツは内戦が続いていたシリアなど中東地域から多数の難民を受け入れてきたうえ、ウクライナの避難民も受け入れ、移民・難民・避難民の急増が社会問題となってきました。投票を10日後に控えた2月13 日には南部ミュンヘンで、難民認定申請中のアフガニスタン人が運転したとみられる車が群衆に突っ込み30人が死傷する事件が起きています。
こうしたなか、最大野党だったCDU/CSUは選挙戦で移民・難民の入国規制を強化すべきだと訴え、支持を広げました。CDU党首のフリードリヒ・メルツ氏は16年間首相を務めたアンゲラ・メルケル氏と首相の座を争ったこともあります。そのベテランを軸に、移民対策を積極的に進める姿勢が国民の共感を呼んだのです。
CDU/CSUは4年ぶりに政権を奪還し、メルツ氏を首相とする連立政権の発足が有力視されています。
移民問題が追い風になったのは極右のAfDも同じです。その効果は、むしろ、CDU/CSU以上だったかもしれません。