極右AfDとトランプ政権の共通点

 AfDは移民排斥を主張し、国内の移民を出身国へ移送すると訴えました。ユダヤ人の大量虐殺を行ったナチスに同調する姿勢を繰り返し示してきました。

 有権者はナチスの再来を望んだわけではないと思われますが、移民の急増や経済の低迷に苦しむあまり、AfDに投票した有権者が多かったとみられます。極右政党が国政第2党となるのは戦後のドイツで初のことです。

第2党に躍進した極右AfDのアリス・ワイデル共同党首(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 AfDを国外から支援し、選挙戦に微妙な影響を与えたのが米トランプ政権です。トランプ政権も米国で移民の強制送還政策を掲げており、AfDとは共通点があるのです。ウクライナ戦争でロシア寄りの姿勢を取る点でもAfDとトランプ氏は一致しています。

 トランプ氏側近の富豪イーロン・マスク氏は2025年1月、AfDの選挙集会にビデオ出演し、ドイツ国民が自らの国家に誇りを持つよう訴えました。バンス副大統領は2月のミュンヘン安全保障会議での演説で、欧州諸国における極右勢力排除の動きを批判し、AfDのアリス・ワイデル党首とも会談しました。

ミュンヘン安全保障会議で演説するバンス米副大統領(写真:ロイター/アフロ)

 こうした流れのなかで、ドイツの有権者には「右傾化への危機感」も広がりました。旧東ドイツ共産党の流れをくむ「左派党」が、若い世代の支持を集めて64議席を獲得したのはその一例でしょう。

 昨年のドイツ地方選でも見られましたが、AfDや左派党など新興政党への支持は旧東独地域で目立っています。東西の経済格差が広がり、旧西ドイツの既成政党が政治を支配する構図に対し、東側から反発が出ているのです。