(国際ジャーナリスト・木村正人)
トランプは「狭い世界を股にかけて聳え立つ巨人」なのか
[ロンドン発]ブルータス「また歓声が! あの喝采からすると、シーザーに新たなる栄誉が与えられたな」
キャシアス「まったく、この狭い世界を股にかけて聳え立つ巨人コロッサスさながらじゃないか。我々小者は、その巨大な股の下をくぐって、きょろきょろと、自分が収まるみじめな墓穴を探している」
「人間とは、自分の運命を時に自分で決めるものだ。我々が下っ端であるのは、ブルータスよ、運命のせいじゃない。自分のせいだ」(『新訳 ジュリアス・シーザー』シェイクスピア、河合祥一郎/訳[角川文庫]より)
キャシアスは元老院議員で後のシーザー暗殺の首謀者。コロッサスはエーゲ海南東部のロードス島に建造されたとされる太陽神ヘーリオス(アポロン)をかたどった巨像のことだ。
第2次トランプ米政権の発足から約1カ月。2月22日、メリーランド州で開催された米国最大の保守派討論会「保守政治活動会議」(CPAC)に現れたドナルド・トランプ大統領を英紙ガーディアンのデービッド・スミス・ワシントン支局長はシーザーに例えた。
「神よ、王を守りたまえ。権力に酔いしれたトランプ氏は熱狂的な支持者を前に勝利を誇示し、彼の敵を嘲笑し、自らを米国の絶対君主、最高指導者、そして神聖な皇帝のすべてを兼ね備えた存在であるかのように演じた」(スミス支局長)