
はじめに
2025年2月24日、ウクライナ戦争が勃発して早くも3年が経過した。
米国のドナルド・トランプ大統領がロシアとの停戦交渉を進めているが、その交渉の行方は依然として不透明である。
このような状況の下、2月23日、ドイツでは総選挙が実施され、予想どおり、中道右派の「キリスト教民主・社会同盟党(CDU/CSU)」が第1党となった。
そして、極右として警戒されていた「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2党となった。
ドイツの選挙結果は、今後、ドイツの安全保障、とりわけ国防政策にどのような影響を及ぼすのであろうか。
ロシアによるウクライナ侵攻直後、ドイツは「時代の転換点」を迎えたとして、国防費をGDP(国内総生産)比2%とし、真に戦える連邦軍の整備を進めている。
本稿においては、ウクライナ戦争を契機にロシアによる侵攻対処に危機感を抱くドイツについて、その連邦軍の近代化のために不可欠な国防費の規模に関する議論を紹介しつつ、今後の展望について考察する。
NATOにおける国防費支出基準
2月12日、英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)は世界の軍事情勢を分析した報告書「ミリタリー・バランス」2025年版を公表した。
2024年の世界の防衛費は、前年比7.4%増の2兆4600億ドル(約377兆円)だった。
ロシアが41.9%、ロシアの脅威に対抗する欧州が11.7%増加するなどウクライナ侵攻が大きく影響した。
報告書によると、2024年のロシアの防衛費は1459億ドルで、GDPの6.7%に上った。2025年はさらに増額される見通し。
欧州では、ドイツの上昇幅が最も大きく前年比23.2%増。金額では859億ドルで、欧州最大の支出となった。
NATO(北大西洋条約機構)加盟国が支出すべき国防費を2%と算定した基準は2014年のロシアのクリミア併合時であった。
ウクライナ戦争が3年目に入り、安全保障環境は大きく異なっている。
連邦軍は主としてNATOの枠組みの下で、どのような任務を遂行するのかによって、その編成装備を整備し、そのための国防費を確保する必要に迫られている。
ポーランドやバルト3国は、ドイツよりも早期に国防費2%以上を支出したが、それはロシアの脅威を目の当たりにしたからである。