防衛産業が国防費増大を要求する背景
2022年の連邦軍特別基金導入の結果、ドイツの国防費がGDP比2%に到達しながら、連邦軍全体で見た場合、その能力は2022年2月よりも弱体化していると指摘する向きがある。
その理由は連邦軍の保有装備をウクライナに提供しているからである。
装備品の生産を増大するために必要なのは、加盟国の装備輸出規制の緩和と調整された調達制度の確立である。
国家の影響が強い場合、契約には夥しい時間と労力を必要とし、国家は軍事産業を統制しようとする。
ドイツの軍事産業が競争力をもつためには、国家の統制を弱め、資本主義の原点に立ち返るべきと防衛産業の重鎮の多くが指摘している。
また、ドイツの装備品の生産は夥しい時間を要する。
ロシアはドイツの全装備品の総在庫量をわずか半年以内で生産している。
翻ってドイツの場合、2004年に保有していた戦車と同数を確保するためには、現在の戦車の生産進捗度が継続したとして、2066年まで戦車を生産し続けなければならない。
同様に、ドイツの主要火砲である「PzH2000」自走155mm榴弾砲の場合だと、100年間、生産を継続しなければならない。
このように、ドイツにおいては防衛装備品の生産には夥しい時間がかかる。しかも、非常に高価である。
ウクライナ戦争でも戦闘の帰趨を決める榴弾砲について、PzH2000を生産するラインメタル社とKNDS社は毎年わずか10両以下のPzH2000しか生産していない。
しかも、1門は1700万ユーロ(約27億円)である。
他方、ウクライナの「ボーダナ(2S22)」155mm自走装輪榴弾砲は年間200両が生産され、そのコストは1門あたりわずか200万ユーロ(約3億円)である。
このように、ドイツのような世界に冠たる工業国であっても、いまだ大量生産体制に移行できていない。
防衛産業は政治に対し、国防費の確保はもちろんのこと、各種要望を陳情しているゆえんである。