埼玉県さいたま市浦和区仲町に本店を置く書店チェーン、須原屋。須原屋茂兵衛の流れをくむ SKD, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

(鷹橋忍:ライター)

今回は、大河ドラマ『べらぼう』において、里見浩太朗が演じる書物問屋の須原屋市兵衛と、風間俊介が演じる地本問屋の鶴屋喜右衛門を取り上げたい。

【須原屋市兵衛】弾圧の危機を乗り越え、『解体新書』を刊行

 須原屋市兵衛は、江戸の代表的な書物問屋で江戸一の大書商と称される須原屋茂兵衛(すはらやもへえ)の分家にあたり、申椒堂(しんしょうどう)を号した。

 生年は不詳だ。

 須原屋市兵衛は、当時の最先端の知識である蘭学に深く共鳴し、蘭方医、蘭学者の杉田玄白、蘭学者で戯作者の森島中良(平賀源内の弟子)、安田顕が演じる平賀源内らの著作を、いち早く出版した。

 平賀源内の著作に強く執心したとされ、源内の代表作『物類品隲』、『火浣布略説』、『神霊矢口渡』を刊行。さらに、『根なし草』、『風流志道軒伝』の版権を、他店から買い取っている(今田洋三『江戸の本屋さん』)。

 須原屋市兵衛は、杉田玄白らによる日本最初となる本格的な翻訳医学書『解体新書』を刊行したことでも知られる。

 当時、幕府は蘭学に対して厳しく目を光らせていた。そのため須原屋市兵衛も絶版処分を覚悟のうえで刊行を引き受けたと思われ、刊行に至るには相当の苦労があったという。

 天明5年(1785)には、経世論家で、「寛政の三奇人」の一人である林子平(はやししへい)が著した『三国通覧図説』の刊行を受け持つが(刊行は翌天明6年)、これが没落を招くことになる。