トランプとプーチンが共有するルネ・ゲノンの「現代世界の危機」観
バノン、ドゥギン両氏から学んだ米ロ指導者の「保守改革」とは
2025.2.26(水)
高濱 賛
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プーチンの狙いは「ソビエト連邦」の再構築
米識者の中には、トランプ氏とプーチン氏とのディールは、「小国・ウクライナ」をどうするのか、といったちっぽけな話だけではないと強調する者も少なくない。
英保守党のクリス・パッテン元党首(その後オックスフォード大学学長)は「尊敬してやまなかったアメリカン・バリュー(米国の価値観)は消滅した」と嘆く。
ポーランドの国会議員の一人は、「今、我々の目の前で新しい歴史が創られようとしている」とポツリと言っている。
英BBCは、「これは戦後体制の終わりを意味するのか、新しい世界秩序を目指して我々はどこへ行くのか」と問いかけた。
プーチン氏はロシア国家のステータスの原状回復(つまりかつてのソビエト連邦の再現)を切望してきた。
トランプ氏はそれに理解を示している唯一の西側指導者だという。
そのプーチン氏の政治思想形成に最も影響を与えたのが、アレキサンドル・ドゥギン氏(63)だとされている。「プーチンのブレーン」とさえ言われている。
極右の政治哲学者で、ネオユーラシアニスト理論学者。著書に「The Fourth Political Theory」がある。
ファシズム、リベラル・デモクラシー、マルクス主義を拒絶し、「保守改革」(Conservative Revolution)を提唱してきた。
ドゥギン氏はフランスの哲学者、ルネ・ゲノン、ジョセフ・スターリン、マルティン・ハイデガーらの影響を受けた。
中でもゲノン氏の著書「The Crisis of the Modern World」はドゥギン氏にとってはバイブル的存在だったという。
(The Crisis of the Modern World (Collected Works of Rene Guenon): Amazon.com: Books)
このドゥギン氏がプーチン氏に「世界中で最も誇れるのはユーラシアン・エトスであり、地球上にユーラシア帝国を建設する文明的ミッション(使命)がある」と諭したという。
こうした理想を実現させるために、プーチン氏に授けた当面の任務は①リベラル・デモクラシーの牙城である米国を政治的混乱に陥れる、②英国を欧州連合(EU)から離脱させる、③人工国家・ウクライナをロシアに併合する――などだった。
(このうち、①と②は達成しており、今回のトランプ停戦案が実現すれば③も部分的に実現する)
(A real Russian heart: Aleksandr Dugin, Vladimir Putin and the dangerous new Russian ideology - Engelsberg ideas)
(Who is Russian ultranationalist Alexander Dugin? | Russia-Ukraine war News | Al Jazeera)