プーチンの狙いは「ソビエト連邦」の再構築

 米識者の中には、トランプ氏とプーチン氏とのディールは、「小国・ウクライナ」をどうするのか、といったちっぽけな話だけではないと強調する者も少なくない。

 英保守党のクリス・パッテン元党首(その後オックスフォード大学学長)は「尊敬してやまなかったアメリカン・バリュー(米国の価値観)は消滅した」と嘆く。

 ポーランドの国会議員の一人は、「今、我々の目の前で新しい歴史が創られようとしている」とポツリと言っている。

 英BBCは、「これは戦後体制の終わりを意味するのか、新しい世界秩序を目指して我々はどこへ行くのか」と問いかけた。

 プーチン氏はロシア国家のステータスの原状回復(つまりかつてのソビエト連邦の再現)を切望してきた。

 トランプ氏はそれに理解を示している唯一の西側指導者だという。

 そのプーチン氏の政治思想形成に最も影響を与えたのが、アレキサンドル・ドゥギン氏(63)だとされている。「プーチンのブレーン」とさえ言われている。

 極右の政治哲学者で、ネオユーラシアニスト理論学者。著書に「The Fourth Political Theory」がある。

 ファシズム、リベラル・デモクラシー、マルクス主義を拒絶し、「保守改革」(Conservative Revolution)を提唱してきた。

 ドゥギン氏はフランスの哲学者、ルネ・ゲノン、ジョセフ・スターリン、マルティン・ハイデガーらの影響を受けた。

 中でもゲノン氏の著書「The Crisis of the Modern World」はドゥギン氏にとってはバイブル的存在だったという。

The Crisis of the Modern World (Collected Works of Rene Guenon):  Amazon.com: Books

 このドゥギン氏がプーチン氏に「世界中で最も誇れるのはユーラシアン・エトスであり、地球上にユーラシア帝国を建設する文明的ミッション(使命)がある」と諭したという。

 こうした理想を実現させるために、プーチン氏に授けた当面の任務は①リベラル・デモクラシーの牙城である米国を政治的混乱に陥れる、②英国を欧州連合(EU)から離脱させる、③人工国家・ウクライナをロシアに併合する――などだった。

(このうち、①と②は達成しており、今回のトランプ停戦案が実現すれば③も部分的に実現する)

A real Russian heart: Aleksandr Dugin, Vladimir Putin and the dangerous new Russian ideology - Engelsberg ideas

Who is Russian ultranationalist Alexander Dugin? | Russia-Ukraine war News | Al Jazeera