トランプとプーチンが共有するルネ・ゲノンの「現代世界の危機」観
バノン、ドゥギン両氏から学んだ米ロ指導者の「保守改革」とは
2025.2.26(水)
高濱 賛
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目障りなゼレンスキーは蚊帳の外
ところで、米ロ高官協議には、当事者であるウクライナ高官は招かれていなかった。
ロシアのウクライナ侵攻以降、民主主義を守る闘士としてどんな外交の場にも軍服シャツで臨み、ウクライナのシンボルのような存在だったウォロディミル・ゼレンスキー大統領にはお声がかからなかった。
トランプ氏はその理由として「過去3回の停戦に向けた協議の芽をつぶした」からだと言い、同氏を「選挙の洗礼を受けていない独裁者」と切って捨てた。
さらに「世論調査での支持率は4%だった」とまで言ってのけた。
(ロシアによる侵攻を受けてウクライナは戒厳令下で選挙などできる状況にはない。支持率もNGO 「Advanced Legal Initiative」の調査では、ゼレンスキー氏は16.1%と、元軍最高司令官のヴァレイリ・ザルジニー駐英大使の24.3%に大きくリードされているものの、4%というのはロシア情報だ)
停戦後、ウクライナでの大統領選挙を実施することがロードマップにあるようだが、ゼレンスキー氏が再選されるという保証はない。
(現に気の早い話だが、ワシントンでは停戦後のゼレンスキー氏の国外亡命説が囁かれている)
トランプは「ネギ背負ったカモ」?
いずれにしてもウクライナ停戦に向けてまず動いたのはトランプ氏だ。
大統領選挙中には「大統領になったら直ちに戦争をやめさせる」と公約していた。
過去4年間、ことあるごとにプーチン氏の軍事行動に理解を示すような発言を繰り返してきた。
今回、米ロの間で「うっすらとした合意」に達している米国の提案は、①停戦、②ウクライナ大統領選実施、③停戦協定の署名――だ。
停戦の条件は、ロシアが支配している南西部のヘルソン、ルハンシク両州の割譲だ。
ウクライナ侵攻時のプーチン氏の目標は、①領土奪還(2014年以前の領土)、②首都キーウに親ロシア政権を樹立すること、③ウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に加盟させないこと、④ロシアの国際社会での地位を原状回復させること――だった。
その意味では、トランプ氏の停戦案はまさに「カモがネギを背負ってきたような案」だった(ネギの大きさは少し小さいが・・・)。
戦争疲れ気味のプーチン氏にとっては、「盟友」トランプ氏が差し出した「オリーブの枝」(停戦案)はありがたかったはず。
戦費も嵩み、西側の経済制裁はロシア経済を締め付けている。ロシア系住民が大半を占めるウクライナ南西部州が獲得できれば御の字だ。
米保守派の反トランプ陣営の論客、ウィリアム・クリストル氏などは「トランプの提案は親プーチン外交そのものだ」(All-in on a pro Putin foreign policy)と断定している。
(To Russia, With Love, Donald)
昨日までホワイトハウスの主だったジョー・バイデン前大統領などはあいた口が塞がらないのか、コメントは聞こえてこない。
東部、西部のリベラル派外交エリートも沈黙だ(あるいは言っても今のメディアは報じないのか)。