米国では鶏卵価格上昇、国内外で食料インフレに

 河田氏は10年余り続く生鮮食品の値上がりは「気候変動という地球規模の構造問題の帰結であり、無視すべきではない」と主張する。

 食品の高騰は格差の拡大にもつながる。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは2月10日のリポートで、食品価格の上昇と同時に消費者の節約志向が強まり、消費性向が低下していることがエンゲル係数の上昇をもたらしたと分析。「食料やエネルギー価格の上昇は低所得者層ほど重くのしかかり、富裕層との間の実質的な生活格差が一段と拡大する」とみている。日本で低所得者層の割合が上昇傾向にあることも深刻だという。

 食料インフレは金融政策(日銀の利上げ判断)にも影響するのか。コメなどの食料高を利上げでどれだけ抑制できるかについては疑問の声も多いが、河田氏の答えはYESだ。

「最近の食品メーカーの値上げには労務コストの増加、日銀の言う第2の力(賃金上昇)の要素が入ってきている可能性が高く、ここでも賃金・物価上昇の循環が実現されつつある。日銀がターゲットにしているのはあくまでCPIであり、コメなどの個別の財ではない」ことを理由に挙げる。

 永濱氏は経済的に利上げ判断が正しいかどうかは意見が分かれるとしながらも、需給ギャップがマイナスにもかかわらず日銀が利上げする理由として、「為替がインフレに及ぼす影響が大きくなり、円安を放置するとインフレ上振れリスクがある」としていることを指摘。やはり「食品の値上がりも利上げの追い風になる」と考える。

 米国でも鳥インフルエンザの影響で鶏卵価格が上昇。1月のCPI上昇率は市場予想を上回り、利下げが遠のくとの見方が広がった。国内外で食料インフレが金融市場や政治の撹乱要因になる可能性がある。