生産者保護ばかり考えていた戦後の農政
スーパーの店頭からコメが消え、子育て世代が子供に持たせる弁当作りに困っても、主食用から厳格に隔離した飼料米(一般銘柄を含む)や輸出用のコメを活用しようとはしない。備蓄米の放出にあたって「市場への影響を避ける」意図も、需給緩和と値崩れを起こす事態を防ぐことにある。戦後農政の先には常に生産者保護がある。
平成のコメ騒動時にはまだ国内で1000万トン規模の需要があった。政府は25年7月〜26年6月の主食米需要を663万トンと見込む。天候異変や地震に備える消費者の購入などで需給バランスに20万〜30万トン規模の「想定外の振れ」が起きれば、市場規模が縮小した分だけインパクトは大きくなる。
食糧管理法(1995年廃止)の時代に比べ生産者は自由にコメを売れるようになり、流通市場への参入も容易になった。一方で政府による需給管理の難易度は増している。需給が逼迫し、価格が跳ね上がれば消費者を価格高騰が襲う。
「コアCPI」から生鮮食品の価格変動を除くべきなのか
野菜などの高騰が継続しても、「コアCPI」と呼ばれる政府の物価統計では生鮮食品の価格変動は「ノイズ」として位置づけている。
みずほリサーチ&テクノロジーズの河田皓史エコノミストは昨年7月、2013年ごろから天候不順の増加により国内で生鮮食品価格の上昇トレンドが強まり、生鮮食品を除く「コアCPI」との乖離が年々拡大していると分析したリポートを公表した。
コアCPIから生鮮食品(野菜と果物、魚介類)を除く理由は、天候異変による短期の変動が物価のトレンドを捉える際の障害(ノイズ)になるためだ。しかし、ピークの08年に35万トン以上あったサンマの漁獲量は、海洋環境の変化や中国などの漁獲拡大で10分の1以下に激減。サバももはや大衆魚とは言い難い存在になっている。